時は、殷より遥か昔――まだ大陸が「支那(しな)」と呼ばれていた時代。
天界には神仙が住み、数多の神々が行き来していた。
その中に、東西南北の四海を支配する四海龍王が存在した。
東海を統べるは、東海青龍王・敖廣(ごうこう)。
西海を統べるは、西海白龍王・敖閏(ごうじゅん)。
南海を統べるは、南海紅龍王・敖紹(ごうしょう)。
北海を統べるは、北海黒龍王・敖炎(ごうえん)。
そして――彼らの頂点に君臨するは、龍族の王 四海神龍王・敖秦(ごうしん)といった。
東海青龍王の分系にあたる水龍王の娘であり、仙界一の踊り子とうたわれる・竜音(りんね)はある日、禁忌を犯した。
その身に宿した命は、誰もが望まないものだった――否、宿ってはいけないものだった。
しかし、彼女はその宿った命を捨てる事は出来なかった。
そして――三百年の月日が流れた。
大陸一の踊り子とうたわれた燐(りん)は、その身を賭して守り抜いてきたものがあった。
しかし、――それらを守る為に、その命を落とす。
7年後、その忘れ形見の宇魅(うみ)と琉嘩(りゅうか)は、追ってから逃れる様に 歌舞団‟炎舞”に身を寄せていた。
そして、いつしか宇魅は燐と同じく‟大陸一の踊り子”として名をはせるようになっていた。
だが――それも長くは続かなかった。
そんな彼女達の元へ、7年前 母・燐を死に追いやった男・玲(れい)が寸分なき姿で現れる。
執拗に追ってくる玲。
そして、宇魅までもが……。
それから、6年後 ――。
16歳になった琉嘩は‟詠”の国に身を置いていた。
彼女の前に現れる謎の男・魁。
彼の目的は一体……。
全ての歯車が噛み合わないまま 再び回り始めようとしていた。
幾千もの紡がれる歴史と、神々をも巻き込む壮大な物語。
その歴史は、‟彼女”の魂と、囚われの身体 ――。
そして――。
あの日――‟蒼の刑”に処された 彼女 と、彼女の愛した ひと――。
そして全てを知る、‟彼”は―――。